原油価格高騰による電気料金への影響
〜高圧・特別高圧の企業が確認すべきポイント〜
イラン情勢の緊迫化によりホルムズ海峡が閉鎖されたことで、原油価格が高騰しています。
これを受け、経済産業省(電力・ガス取引監視等委員会)は、電力小売会社に対してプラン説明の徹底を求め、注意喚起を強化しています。
電気料金プランには大きく分類すると3種類あり、プランによって燃料価格が高騰した時の影響が異なります。
注意喚起強化のポイント
- 「燃料費と連動する料金プラン」「スポット市場と連動する料金プラン」のリスク説明
- 電力小売ガイドラインに基づいた積極的な情報提供
- 市場価格高騰時における電気料金影響の具体的な周知
エネチェンジBizでは、複数の電力会社の媒介事業を行っており、当然、燃料費やスポット市場と連動する料金プランを、数多く取り扱っています。
これらのプランの販売にあたっては、デメリットも特に注意してお伝えすることを心掛けていますが、今回の注意喚起を受け、あらためて企業様の理解を深めることを目的として本稿を作成しました。
燃料費の高騰が電気料金に影響を与える期間や幅は、プランによって違いますが、燃料輸入価格の上昇が、電気料金へ影響を与えるのは、約1ヶ月〜4ヶ月後と言われています。
ただし、高圧・特別高圧で契約中の企業様は、契約変更に約3ヶ月ほど時間がかかりますので、電気料金への影響が出る前に、まずは今のプラン内容を確認しておきましょう。

燃料費と連動する料金プラン
「燃料費と連動する料金プラン」は、以前から大手電力が標準メニューとして展開していた一般的なプラン構成です。
ただし、2022年のロシアのウクライナ侵攻によって燃料費・スポット市場が高騰したことを受けて計算方法が変わっていることには注意が必要です。
従来まで、燃料費のみで変動していましたが、現在はスポット市場価格の変化も反映する仕組みになっています。

基本構成
基本料金+電力量料金+燃料費等調整額+再エネ賦課金
特に重要な点は「燃料費等調整額」が変動する料金である点です。
「燃料費等調整額」は「燃料費調整額(燃料価格に連動する部分)」と「市場価格調整額(スポット市場の取引価格と連動する部分)」の合計のため、燃料費とスポット市場価格の両方の影響を受けることになります。
注意点
- 電力会社によって計算式が異なります。
- 平均期間の見方が電力会社によって異なります。例えば、東京電力は平均1ヶ月の燃料価格を参照するが、他の電力会社では平均3ヶ月の燃料価格を参照するなど。
- 中部電力は参照する燃料価格の指標が通常と異なっています。
※米国LNG価格指標HHを追加で参照する - 新電力には「市場価格調整額」がないプランがあります。
スポット市場と連動するプラン(市場連動型プラン)
電気には、毎日、細かく、価格が変動する株式市場のようなマーケットがあります。日本卸電力取引所(JEPX)が運営するスポット市場というものです。
スポット市場を一言で説明すると「明日使う電気のオークション会場」です。
翌日の取引について発電会社から売り入札、小売事業者から買い入札を実施。需要と供給の交差点で約定する仕組みです。
スポット市場は電力エリアごとに取引され、30分単位48コマで価格が変動します。
市場連動型プランはスポット市場に連動するプランとなっているため、企業様の電気料金も30分ごとに変動しています。
重要なことは、市場価格が安定していることもあれば、急騰することもあるという点です。

基本構成
基本料金+従量料金+電源調達費+再生可能エネルギー促進賦課金
スポット市場価格は、需給バランスや燃料調達費用によって価格が変動します。
スポット市場価格が高いケース
- 冷暖房の使用が多く、需要量が増加している
- 天候が悪く太陽光発電の出力が下がっている
- 発電所の急な不具合により計画外の停止が発生している
スポット市場価格が安いケース
- 気候が穏やかで、冷暖房の使用が少なく需要量が減少している
- 休日や祝日で企業活動が減少している
- 天候がよく太陽光発電の出力が増加している
注意点
- スポット市場は変動するため、価格の高騰が起こり得る。
- 市場連動型プランにも種類があります(30分毎にダイレクトに連動する、朝昼晩の時間帯毎の平均値をとるなど)
燃料費とスポット市場の高騰
スポット市場価格が高騰した事例
- 2021年1月の大寒波による需要増加+LNG在庫の減少による供給力不足
- 2022年2月のロシアのウクライナ侵攻による燃料費高騰
2021年冬の高騰
2020年12月中旬から2021年1月にかけて強い寒気の影響で、全国的に気温が低下しており、暖房需要が爆発的に増加していました。降雪量も多く、大雪による交通麻痺だけでなく、太陽光パネルの埋没による発電量の低下も発生します。
また、新型コロナウイルスの感染拡大から「外出自粛」や「リモートワーク」が普及しており、家庭での暖房需要の増加といった需要構造の変化がありました。
さらに発電に必要な燃料不足という課題もありました。新型コロナウイルスの感染拡大や気象環境の悪化によりパナマ運河の航路に混雑が発生し、LNG輸送船の遅延が発生。燃料不足による発電可能量が減少していたのです。
結果として、2021年1月にスポット市場価格が急騰し、過去最高の251円という異常値を記録します。
251円は平時の25倍以上の価格に相当します。

2022年の高騰
2022年スポット市場は、年間平均価格が20.38円となりました。前年の13.45円から比べると大幅に上昇しています。
要因
- 2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻
- 2022年3月16日の福島県沖地震による火力発電所の停止
- 2022年6月下旬の記録的な猛暑
2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が開始されます。
欧州諸国がロシア産資源の禁輸措置やパイプラインの供給停止を行ったことから、燃料の争奪戦が発生しました。代替先の需要が急増したことで燃料価格が高騰します。
また「有事のドル買い」により円安が進行したことで、輸入価格が増加します。
2022年3月16日、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震が発生しました。福島県及び周辺エリアに位置する大規模火力発電所が相次いで緊急停止します。計14基、647万kWの火力発電所が停止したことで需給バランスが急激に悪化しました。
また、火力発電所の廃止が想定以上に進んでおり、安定供給に必要な予備率の見通しが3.1%しかなく、構造的な課題が浮き彫りになります。
2022年6月は記録的猛暑に見舞われます。特に6月26日から6月30日にかけて、東京エリアを中心に「需給逼迫注意報」が連日発令されました。多くの発電所が閑散期はメンテナンスを行っており、7月から稼働する計画になっていました。季節外れの猛暑による急激な冷房需要の増加に対応が遅れ、スポット市場の価格が急騰します。
結果として、2022年6月29日にスポット市場価格が100円に達します。

高圧電力・特別高圧の法人企業様の確認すべきポイント
確認すべきポイントは3つあります。
①「現在の契約内容の確認」②「自社の電力の使い方」③「電力会社を見直す時の対応方法の確認」です。

①現在の契約内容の確認
高圧電力・特別高圧の契約の場合、低圧電力の契約とは異なり、契約期間や違約金・精算金についての取り決めが契約書に記載されています。
例えば、年度ごとに契約期間が定められている場合や、供給開始から1年が契約期間の場合があります。
また違約金・精算金についても、1年未満の解約により違約金が発生する場合や、1年以上契約していても契約更新のタイミング以外は全て違約金が発生する場合があります。
市場連動プランの場合は違約金がかからない場合もございますが、条件は電力会社によって異なります。
②電力の使い方の確認
スポット市場価格は、日中が安く、夕方から明け方にかけて高くなる傾向があります。
太陽光発電の出力が増加している間は、供給量が豊富なことから価格が下落するためです。
そのため、夕方から夜間の電力使用量が多い企業様の場合、スポット市場価格高騰の影響をより受けやすい傾向になっています。
自社の電力の使い方を確認した上で、契約プランを検討できるように準備しておくことがおすすめです。
③電力会社を見直す時のポイント
低圧電力には規制料金というものがあります。
主に一般家庭向けの電気料金プランについて、電力全面自由化後も国の認可がなければ変更できないプランが大手電力にはあります。
しかし、高圧電力・特別高圧には規制料金がなく大手電力は料金プランの変更を自由に行うことができ、2022年のスポット市場価格高騰時は、新規の受付を停止する事態になりました。
大手電力で受付が止まった場合も、大手電力の送配電部門が用意している「最終保障供給契約」を受けることができます。
そのため、電力会社の契約ができなくなることはないです。
「最終保障供給契約」は、大手電力の標準メニューの1.2倍を基礎として、スポット市場価格が高騰した場合はその価格を上乗せする契約です。つまり、「最終保障供給契約」は割高な緊急避難用の契約です。
そのため、最終保障供給契約より新電力の用意している市場連動プランの方が割安になります。
まとめ
電気料金プランには「燃料費に連動するプラン」「スポット市場に連動するプラン」があります。
燃料費やスポット市場の価格は、需要と供給のバランスや国際情勢などやむを得ない事情で変動します。そのため、「燃料費等調整額」や「市場連動型料金プラン」など、電気料金に反映する仕組みがあります。
ただし、計算ロジックが電力会社ごとに異なっており、正確に比較することが困難になっています。
現在契約しているプランがどの程度リスクがあるものかわからない。
固定単価のプランに見直してリスクを軽減したいが、電力会社・プラン選びで困っている方。
エネチェンジBizでは、複数の電力会社に一括見積依頼を行って、複数のプランをまとめて比較することが可能です。
まずはお問い合わせいただき、お見積り結果を確認しながら現在のプランが最適なものか、一緒に確認いたしませんか。